「本に囲まれた空間が欲しい」というご主人の言葉が、この計画の始まりでした。
そのお話の中から、単に独立した書斎を設えるのではなく、日々の暮らしの延長線上にありながら、静かに思索にふけることのできる特別な場所が求められているのだと感じ取りました。
母屋の隣に、もう一つの小さな家を建てる「離れ」というアイデアです。
しかし、ただ物理的に離すだけでは、母屋との間に心理的な断絶が生まれ、やがては訪れない場所になりかねません。二つの建物の関係性をどう築き、お二人の毎日にどうすれば自然に溶け込むのか。それはこの設計の核であり、熟考を重ねた点です。

静かな思索の時間と、生命を育む土に触れる時間。その両方が、これからの暮らしを豊かにすると考え、「離れ」と共に「畑」を暮らしの中心に設えることにしました。
その想いを形にしたのが、二つの建物を繋ぐウッドデッキです。 これは便利な動線としての廊下ではなく、意識を切り替えるための装置としての「橋」です。一度、外の空気に触れることで、日常から静寂へ、そして再び日常へと、心の準備が整えられる。そのひと手間がもたらす精神的なゆとりこそ、この離れを特別な場所にすると意図しました。
生活の拠点である母屋と、自分の世界に没頭できる離れ。 その間をこのウッドデッキが緩やかに結び、お互いの気配を感じながら、それぞれの時間を尊重できる。そのような、お二人にとって心地よい距離感を生み出すことを目指しました。
この場所が、これからの人生を彩る、かけがえのない居場所となること。そしてこの家が、お二人と共にゆっくりと時間を重ね、深い味わいを増していくこと。これ以上の喜びはありません。
私たちは、単に「家」という箱をつくるのではなく、そこに住まう方の「暮らし」そのものを設計したいと考えています。 お客様の想いの奥にある、本当に大切にしたい価値観を共有するところから、私たちの家づくりは始まります。
まずはお気軽に、あなたの物語をお聞かせください。