擁壁の耐用年数は何年?劣化状態の確認方法と新築・建て替え時の考え方を解説

2025/10/30

耐用年数を過ぎた擁壁

擁壁のある土地で新築や建て替えをする場合、耐用年数や劣化状態は必ずチェックすべき重要なポイントです。

擁壁は年数が経つと劣化が進んでいき、構造によって耐用年数の目安が異なります。

耐用年数を過ぎたり劣化が進んだりした擁壁がある土地では、崩壊による事故や隣地トラブル、建築確認が下りないなど家づくりにおけるリスクがあります。

そこでこの記事では、擁壁の種類別の耐用年数の目安や、劣化サインのチェックポイントなど、擁壁のある土地での家づくりで知っておくべき基礎知識をまとめました。

耐用年数を過ぎた擁壁の対処方法や費用相場も解説しますので、ぜひマイホームの土地探しや計画にお役立てください。

 


コラムのポイント

  • 擁壁は構造によって耐用年数の目安が異なり、20~50年と幅があります。
  • 耐用年数だけでなく、法基準への適合や劣化状態などをチェックすることが大切です。
  • 新築や建て替えをする際は、擁壁の耐用年数が残っていても補強ややり直しなどのタイミングを考えましょう。

 

擁壁には寿命がある|耐用年数を過ぎた場合のリスク

耐用年数を過ぎた古い擁壁

擁壁は高低差のある土地を支える重要な構造物ですが、半永久的に使えるわけではなく寿命があります。

擁壁を構成する鉄筋コンクリートは時間とともに劣化して強度が低下し、耐用年数を過ぎると次のようなリスクが発生します。

 

  • 崩壊による人身事故や建物被害
  • 隣地や道路への土砂流出によるトラブル
  • 建築確認申請が通らない

 

耐用年数が過ぎた擁壁は地震や大雨などによる崩壊リスクが高くなり、人や建物への被害、土砂流出によるトラブルが発生する可能性があるため注意が必要です。

擁壁は土地の所有者に管理責任があり、万が一崩壊により他社に被害を与えた場合は賠償責任を問われます。

仮に前の所有者がつくった擁壁であっても、土地の購入後は新しい所有者に管理責任があります。

新築住宅を建てる土地を購入する際は、構造ごとの耐用年数や劣化状態をチェックすることが重要なのです。

擁壁の種類別・耐用年数の目安

擁壁の耐用年数は、構造の種類によって大きく異なります。

同じように見える擁壁でも、鉄筋コンクリートやブロックなどの構造で寿命の目安が変わるため、土地購入や新築・建て替え計画の際には必ず確認しておきましょう。

鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁)|約30〜50年

耐用年数が長い鉄筋コンクリート擁壁

鉄筋とコンクリートを組み合わせてつくる鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁)は、採用例が多く耐用年数も長い構造です。

圧縮力に強いコンクリートと引張力に強い鉄筋の組み合わせで高い強度を持ち、耐用年数は約30~50年が目安です。

ただし、年数が経つにつれてコンクリートの中性化が進み、強度の低下や内部の鉄筋の腐食などが発生することがあります。

間知ブロック擁壁|約30〜40年

耐用年数を過ぎた間知ブロック擁壁

コンクリートでつくられた間知ブロックを積み上げる擁壁は、練積ブロック擁壁と呼ばれることもあり、住宅地などで多く見られる構造です。

間知ブロックの重さで土を支える構造のため、擁壁が斜めになり活用できる敷地面積はやや狭くなります。

耐用年数の目安はRC擁壁より少し短く、約30~40年で補修ややり直しが必要です。

石積み擁壁|約20〜30年

耐用年数が短い石積み擁壁

自然石や加工された石材を積み上げてつくる石積み擁壁は、最近では採用例が減っていますが古い住宅地などで見かけることが多い構造です。

石積み擁壁の耐用年数は施工方法によって変動しますが、前述した構造より短めで約20~30年が目安となります。

築年数が経っていることが多いため、新築や建て替え予定地に石積み擁壁がある場合は補強ややり直しが必要になることが多いです。

また、大谷石擁壁やただ石を積み上げただけの空石積み擁壁は、新築時の建築確認申請が通らないこともあるので要注意です。

〈関連コラム〉

擁壁の確認申請が必要な条件|検査済証や劣化などチェックポイントも解説

擁壁の耐用年数の確認方法

擁壁の耐用年数をチェックする専門業者前述したように擁壁の耐用年数は構造ごとに目安がありますが、実際の寿命は状況によって異なります。

実際にどれくらい残存寿命があるかを判断するには、法的適合性・築年数・劣化状態の3つを確認することが重要です。

建築基準法の適合性を確認する

高さ2m以上の擁壁がある土地は、耐用年数の前に現行の建築基準法に適合しているか確認する必要があります。

建築基準法に適合していない「不適格擁壁」は確認申請が通らないため、仮に耐用年数が残っていてもそのままでは新築や建て替えができません。

建築基準法への適合性は、検査済証や自治体の窓口で確認できます。

築年数を確認する

擁壁がつくられてから何年経っているのか築年数を確認することで、大まかな耐用年数を推測できます。

擁壁の築年数は、検査済証の記載内容や自治体の建築指導課などで確認できる場合があります。

また、不動産会社や売主に直接聞くのも1つの方法です。

公式な記録や売主の情報から築年数が分からない場合は、その住宅地が造成された年数から大まかな時期を推測することも可能です。

専門家による擁壁の劣化診断

擁壁の耐用年数は劣化の進行具合によっても変わるため、新築や建て替えの前には専門家による診断を受けるのが望ましいです。

例えば、現行の法基準を満たしていて、築年数が耐用年数を過ぎていない擁壁でも、劣化が進行していると補強ややり直しが必要になることもあります。

なるべく擁壁に詳しい専門家に相談し、表面のひび割れやクラック、水抜き穴の有無や詰まりなど、総合的に劣化診断を受けましょう。

〈関連コラム〉

擁壁のトラブル例と対策|劣化や境界をチェックしてトラブルを防止

耐用年数を過ぎた擁壁の対処方法と費用相場

耐用年数を過ぎた擁壁の部分補修工事

擁壁が耐用年数を過ぎている場合や、劣化が進んでいる場合は、補強ややり直しなどの対処が必要です。

擁壁工事ではまとまった費用がかかるケースが多いため、新築や建て替え時はトータルで予算を考える必要があります。

 

擁壁工事の種類 費用相場
新設・やり直し 1㎡あたり10万円~(建造のみ)
ひび割れ補修 3万円~/m
水抜き穴の設置 3万円~/箇所
石積み補強工事 4~10万円/㎡

参照:一般社団法人 日本擁壁保証協会 第15回 やばい擁壁!!工事内容と費用は?【補修編】

 

上記のように擁壁工事の内容によってある程度の相場はありますが、実際は現場状況や構造などさまざまな要素で費用が変動するため、あくまで目安でしかありません。

例えば、擁壁の構造の種類によって建造費用は変わります。

また、敷地が狭く重機が使えなかったり、交通誘導員が必要だったりすると、擁壁工事以外の付帯費用が増加します。

耐用年数を過ぎた擁壁工事の費用相場や考え方については、こちらのコラムでも解説していますのであわせてごらんください。

〈関連コラム〉

擁壁工事・補修にかかる費用相場は?土地購入前に知っておきたい基礎知識

新築予定地での擁壁の考え方

新築予定地の擁壁

これから新築を建てる予定の土地に擁壁がある場合、耐用年数だけでなくさまざまな要素を踏まえて計画を立てる必要があります。

例えば、擁壁のある土地に新築住宅を建てる場合は、残りの耐用年数とこれから住む予定年数のバランスを考えましょう。

擁壁が現行の法基準に適合しそのまま新築を建てられる場合でも、残りの耐用年数によっては補強ややり直しをした方が良いケースもあります。

仮に擁壁の耐用年数が20年残っていたとしても、新築を建てて40年暮らす場合は途中でメンテナンスややり直しが必要です。

家が建っている状態だと擁壁の施工方法が限られたり、工期や費用が多めにかかったりするリスクも考えられます。

家を建てた後すぐに擁壁工事が必要になるようなら、新築時に一緒にやり直した方が良い可能性もあるのです。

また、新築時に擁壁も同時にやり直す場合は、建物と擁壁の基礎を一体化させて費用を抑えたり、より強固につくったりできるケースもあります。

新築と同時に擁壁工事を実施する場合は、費用を金利が低い住宅ローンに組み込めるのも大きなメリットです。

このように、擁壁のある土地の新築や建て替え計画では、耐用年数だけでなくさまざまな要素を総合的に判断する必要があります。

なるべく擁壁工事に詳しい専門家に相談し、適切なアドバイスや提案を受けながら計画を進めましょう。

東京都・神奈川県で擁壁のある土地の新築・建て替えをご検討の際は、私たちCaseIT(ケースイット)にご相談ください。

これまで擁壁のある土地で多くの新築や建て替えを手掛けた実績があり、耐用年数や劣化のチェックからプランニング、施工までトータルサポートいたします。

ぜひお気軽にご相談ください。

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監修者情報

石井崇秀/caseIT株式会社代表取締役のプロフィール画像
石井崇秀/caseIT株式会社代表取締役
■ 経歴
別荘や集合住宅、医療施設、商業施設の設計を経て、2016年にcaseITを設立。住宅やリノベーション、店舗デザインを幅広く手がける。
「すべてのデザインに理由がある」を信条に、美しさと機能性を両立した家づくりを実践。土地探しからメンテナンスまで寄り添い、年間5棟限定で丁寧な家づくりを行っている。

■ 資格情報
二級建築士(神奈川県知事登録 第11074号)

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