擁壁のトラブル例と対策|劣化や境界をチェックしてトラブルを防止
2025/7/30
擁壁のある土地には平地にはないトラブルリスクがあり、買うのはやめた方がいいと言われることが多いです。
しかし、擁壁のある土地で必ずトラブルが起こるわけではなく、うまく選べば費用を抑えて理想的な環境にマイホームを建てられる可能性もあります。
そこでこの記事では、擁壁のある土地でよくあるトラブル例と対策をセットで分かりやすく解説します。
擁壁の劣化による破損リスクや境界トラブルなど、チェックすべきポイントを紹介しますので、土地選びにぜひお役立てください。
コラムのポイント
- 擁壁のある土地はトラブルのリスクはあるものの、うまく対策すれば理想的な立地に住まいを建てられる可能性もあります。
- 費用・境界の位置・建築制限など、擁壁にまつわるトラブル例を1つずつ解説します。
- 擁壁トラブルを防ぐために、土地選びの段階でチェックすべきポイントや対策を覚えておきましょう。
Contents
擁壁にまつわるトラブルは多い?
擁壁のある土地に対してデメリットが多くリスクが高いイメージをお持ちの方は多く、「やめた方がいい」「買ってはいけない」と言われることも少なくありません。
確かに、擁壁のある土地には、平らな土地にはないデメリットやリスクがあるのは事実です。
しかし、擁壁のトラブルリスクを見極められれば、相場より安く理想的な環境の土地を見つけられる可能性もあります。
擁壁の補修費用や地盤改良費用がかかったとしても、土地自体を安く購入できれば、予算内で平地では得られない眺望や日当たりのマイホームを建てられるケースもあるのです。
大切なことは、擁壁にまつわるトラブル例を把握し、リスクを回避するための対策を覚えておくことです。
擁壁にまつわるトラブル例
実際に擁壁のある土地を購入するとき、注文住宅を建てるときによくあるトラブル例をご紹介します。
具体的な対策は次の章で解説しますので、ここではどんなリスクやデメリットがあるのか覚えておきましょう。
擁壁が現行の法基準に適合しておらず家を建てられない
購入した土地の擁壁が現行の法基準に適合しおらず、そのままでは新築を建てらないのは代表的なトラブルの1つです。
建築基準法が施行される以前につくられた擁壁の中には、現行の基準に適合していない「不適格擁壁」もあります。
不適格擁壁自体は違法ではなくすぐにつくり直す必要はありません。
しかし、新築住宅を建てる場合は擁壁も建築確認申請の対象となり、そのままでは建築できないのです。
不適格擁壁があることを知らずに土地を先行購入してしまうと、補強やつくり直しで多額の費用がかかり予算オーバーするリスクが高くなります。
境界線の位置でトラブルになった
古い擁壁の境界線の位置が明確になっておらず、隣地所有者とトラブルになるケースもあります。
築年数が古い擁壁は、境界を示す杭や標識が紛失してしまっていることが少なくありません。
境界の位置が分からないと、擁壁をつくり直す際に位置で揉めてしまうケースなどが多いです。
隣地所有者からクレームが入った
老朽化した擁壁のある土地を購入した場合、隣地所有者からクレームが入りトラブルになるケースも考えられます。
例えば、擁壁の補強やつくり直しでは隣地に入らせてもらう必要があり、工事中の音などでクレームが入るケースもあります。
また、強度に問題がない擁壁でも、見た目が古いと崩壊が怖いからつくり直してほしいなどの要望が入ることもあるようです。
補修費用がかかり予算オーバーした
擁壁の補修やつくり直しが必要になり、住まいづくりの追加費用がかかり予算オーバーになってしまうのもよくあるパターンです。
擁壁のある土地は相場より安く販売されていることが多いですが、大規模な補修やつくり直しが必要だと多額の追加費用がかかる可能性があります。
相場より安いからと土地を先行購入してしまうと、あらかじめ予想していた予算内に収まらず資金が足りなくなるリスクが考えられます。
地盤改良で多額の追加費用がかかった
擁壁自体の強度は問題なくても、家を建てるための地盤改良で多額の追加費用がかかり予算オーバーになるパターンもあります。
擁壁は高低差のある土地につくられていることが多く、地盤までの距離が遠いため改良工事が大規模になる可能性があるのです。
地盤改良の必要性や費用は土地によって変わりますが、一般的な平地より高額になる可能性があるということを覚えておきましょう。
擁壁の崩壊で損害賠償責任を問われた
擁壁自体の崩壊により周囲の建物や人などに被害が発生し、損害賠償責任を問われるのも代表的なトラブル例です。
擁壁の破損や崩壊などによって被害が発生した場合は、土地の所有者が損害賠償を請求されます。
大規模な擁壁の崩壊に限らず、劣化によって擁壁の一部が落下して通行人や駐車している車などに当たっただけでも、損害賠償の対象となる可能性があります。
建築制限がかかり思ったような家を建てられなかった
擁壁のある土地は平地にはない建築制限がかる可能性があり、思ったような家を建てられないリスクもあります。
建築基準法や自治体のがけ条例などの制限により、建蔽率や容積率で決められている床面積の上限で家を建てられないケースも多いです。
また、法律上は問題なくても、擁壁の近くに地盤改良の杭を打ち込むことができず理想的な位置に家を建てられない場合もあります。
特に敷地面積が狭い土地では、建築制限や物理的な問題で思ったような家を建てられない可能性が高いため注意が必要です。
擁壁のトラブルを防ぐ対策
前述したような擁壁にまつわるトラブルを防ぐために、土地選びの段階でできる対策を覚えておきましょう。
検査済証やメンテナンス履歴をチェック
検討している土地に擁壁がある場合は、まず検査済証の有無やメンテナンス履歴をチェックしましょう。
高さ2メートルを超える擁壁は建築確認申請の対象となり、検査済証が無い場合はそのまま新築を建てることができません。
検査済証は原則的に再発行できないため、購入前に必ず有無をチェックしましょう。
また、擁壁がいつ頃つくられて、どのようにメンテナンスされているのかもチェックすべきポイントです。
擁壁の築年数が古かったりメンテナンスされていなかったりする土地は、追加費用がかかる可能性も検討しましょう。
境界の位置を事前に確認する
擁壁の境界トラブルを防ぐために、境界の位置を事前に確認することも大切です。
現地を下見するときは、境界の周囲に杭や標識があるかチェックしましょう。
境界杭や標識が見当たらない場合は、法務局で登記簿謄本などを閲覧して確認する方法もあります。
それでも境界の位置が分からない場合は、土地家屋調査士などに依頼して境界線を明らかにする必要があります。
境界の位置が分からないまま土地を購入するとトラブルになる可能性が高いため、事前に明確にしましょう。
劣化や老朽化をチェックする
擁壁の劣化や老朽化を現地でチェックするのも、トラブルを防ぐために大切なことです。
※擁壁のチェックポイント
- 表面のひび割れやクラックの有無
- 膨らみやブロックのずれ
- 水抜き穴の有無や数、詰まりなどの状態
どのような種類の擁壁でも、上記のような劣化や老朽化のサインが出ている場合は、補修やつくり直しの費用がかかる可能性があります。
また、擁壁には一定数の水抜き穴を設けることが法律で定められていて、数が不足したり詰まったりしていると崩壊するリスクが高くなります。
また、現行の建築基準法に適合していない不適格擁壁のチェックも必要です。
※不適格擁壁の例
- 空石積み擁壁:自然石などを積み上げただけでコンクリートで固めていない擁壁
- 二段擁壁:古い擁壁の上に新しい擁壁を重ねたもの
- ブロック擁壁:ブロックを積んだだけの土留め
上記のような不適格擁壁は崩壊リスクが高く、そのままでは新築を建てることができません。
特に築年数が古い擁壁がある土地は、前述した検査済証の有無をチェックして建築基準法に適合しているか確認しましょう。
購入前に家づくりのプロに相談する
擁壁のある土地は、購入前に家づくりのプロに相談して、予算内で理想の住まいを建てられるか確認するのもトラブルを防ぐポイントです。
家づくりのプロと一緒に土地をチェックして建築プランづくりを同時進行することで、予算オーバーや建築制限による後悔を防ぎやすくなります。
例えば、擁壁のつくり直しや地盤改良の必要性や費用相場は、実績が豊富なプロに相談すればある程度判断してもらえることが多いです。
また、近隣の条件が似ている土地の建築事例を参考に、どのような地盤改良を実施しているのか調査して費用を推測する方法もあります。
なるべく、候補の土地の地域に精通している施工会社や設計会社に相談し、トラブルのリスクを軽減させましょう。
私たちcaseIT(ケースイット)は設計施工会社として、東京都・神奈川県の土地選びから注文住宅づくりをトータルサポートしています。
擁壁のある土地の下見もお手伝いできますので、ぜひご相談ください。
まとめ
擁壁のある土地にはデメリットやリスクもありますが、対策できれば費用を抑えて理想の住まいを建てられる可能性もあります。
トラブルの原因となるポイントを把握し、土地選びの段階でしっかり対策しましょう。
また、擁壁のある土地の家づくりの実績が豊富な会社に相談し、適切なアドバイスをもらうことも大切です。
私たちcaseIT(ケースイット)は設計施工会社として、擁壁のある土地での住まいづくりをサポートした実績が多数ございます。
ぜひお気軽にご相談ください。