断熱等級が高い家を建てるメリット・デメリット|4~7の違いや考え方を解説
2025/1/30
最近の住まいづくりで注目されている断熱等級、実際にどのような性能・基準なのか分かりにくいと感じる方が多いようです。
断熱等級は住まいの快適性や省エネ性に直結する重要な指標ですが、建築費用にも影響するため全体のバランスを考えることが重要です。
そこでこの記事では、断熱等級の基礎知識から、性能を高めることのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
コラムのポイント
- 断熱等級は1~7段階あり、2024年4月からは断熱等級3以下の家は建てられなくなります。
- 断熱等級を高めることで、快適性や省エネ性が向上し、健康リスクを軽減できるのがメリットです。
- 断熱等級を高めるとコストも高額になるため、ほかの要望を踏まえてトータルバランスを考えることが大切です。
Contents
断熱等級が注目されている理由
まずは、断熱等級がどのような指標なのか、住まいづくりにおいてなぜ注目されているのかチェックしていきましょう。
断熱等級とは?
断熱等級の正式名称は「断熱等性能等級」で、断熱材や窓などを総合的に評価することで、住まい全体でどれくらいの断熱性能があるのか判断できる指標のことです。
断熱等級7 | HEAT20 G3とほぼ同じ水準 |
断熱等級6 | HEAT20 G2とほぼ同じ水準 |
断熱等級5 | ZEH住宅・長期優良住宅に必要な水準 |
断熱等級4 | 1999年 次世代省エネ基準 |
断熱等級3 | 1992年 新省エネルギー基準 |
断熱等級2 | 1980年 旧省エネルギー基準 |
断熱等級1 | 無断熱 |
断熱等級は1~7の段階があり、数字が高いほど断熱性能が高い住まいということになります。
断熱等級は「UA値(外皮平均熱貫流率)」と「ηAC値(平均日射熱取得率)」の2つの性能数値で決まり、気候の差を考慮した8つの地域区分ごとに基準値が定められています。
元々は1~4の4段階でしたが、日本政府が掲げている2050年カーボンニュートラルを実現するための取り組みの1つとして、5~7の等級が新たに設けられました。
住まいの断熱性を高めて二酸化炭素の排出量を削減することは地球全体の課題となっており、注目が高まっています。
参照:住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設
2025年から断熱等級4が義務化
建築物省エネ法の改正によって、2025年4月からすべての新築住宅に省エネ基準適合が義務付けられ、断熱等級4を満たすことが必須となりました。
さらに、2030年にはZEHレベルの断熱等級5に引き上げられる予定です。
断熱等級が高い家を建てるメリット
断熱等級が高い家には、快適性や省エネ性などさまざまなメリットがあります。
快適な室内環境を実現できる
断熱等級を高めることで、外気の影響を受けにくく室内の温度差が少ない、快適な室内環境をつくれるのは大きなメリットです。
例えば、寒さが厳しい欧米や北海道では、住まいの断熱性能が高いため冬場の家の中でも薄着で快適に過ごせることは良く知られています。
また、断熱性能が高い住まいは夏の暑さの影響も受けにくく、一定の室温をキープしてどの部屋でも快適に過ごすことができます。
ヒートショックや健康被害のリスク軽減
断熱性能が高い住まいは部屋ごとの温度差が少ないため、ヒートショックをはじめとする健康被害のリスクを軽減できるのもメリットです。
ヒートショックとは寒暖差によって血圧が変動し身体がダメージを受ける現象のことで、温度差が大きい部屋を移動するときに起こりやすいと言われています。
心臓や血管に負担がかかることで、心筋梗塞や脳卒中の発症につながるリスクがあります。
家全体の断熱性能を高めることで部屋ごとの温度差が少なくなり、ヒートショックの発生リスク軽減につながるのです。
参照:横浜市 ヒートショック
光熱費の節約
断熱等級が高いほど外気の影響を受けにくくなり、少ないエネルギーで室温をキープできるため光熱費の節約効果が期待できるのもメリットです。
光熱費は住み続ける間ずっとかかるコストなので、年数が経つほど節約効果も大きくなります。
住宅ローン控除や補助金を利用できる
断熱等級が高い住まいは、住宅ローン控除や補助金を利用して費用負担を抑えられるのも大きなメリット。
年度末のローン残高に応じて所得税が控除される住宅ローン控除は、ZEH、長期優良住宅などの基準を満たすことで借入限度額が高くなり、節税効果も大きくなります。
また、断熱等級を高めることで、省エネ性能が高い住まいづくりを推進する補助金制度の適用要件を満たせるケースも多いです。
例えば、2025年度に実施される「子育てグリーン住宅支援事業」では、断熱等級6以上の「GX志向型住宅」の要件を満たすと1戸あたり160万円の補助金をうけることができます。
断熱等級が高い家を建てるデメリット
断熱等級を高めることには、次のようなデメリットもあります。
対策や考え方は次の章から詳しく解説しますので、ここではどんなデメリットがあるのか確認しておきましょう。
初期費用が高くなる
断熱等級を高めるためには性能の高い断熱材やサッシなどを使う必要があり、マイホーム建築にかかる初期費用が高くなるのは注意すべきデメリットです。
前述したように省エネ性が高くなるため長い目で見れば損にはなりませんが、初期費用が高くなると住宅ローンの審査が通りにくくなったり、返済が負担になったりする可能性があります。
また、断熱性能にかける費用の割合が高くなることで、ほかの部分に妥協せざるを得なくなり、満足度が低下するリスクもあります。
さまざまなメリットがある一方、断熱等級で初期費用が大きく変わるため、コストと性能のバランスを考えることが重要です。
設計の制約が大きくなる
断熱等級が高いほど性能の要求値も高くなるため、設計の制約が大きくなり、思い通りの間取りやデザインを実現できないリスクもあります。
例えば、大きな窓は熱損失が増えるため、断熱等級を高める場合サイズが制限される可能性が考えられます。
高性能なガラスやサッシを使っても、壁と比べると断熱性は劣るため、どうしても制約を受けやすいポイントです。
結局どの断熱等級で建てるべき?
ここまで見てきたメリット・デメリットを踏まえると、マイホームをどの断熱等級で建てるべきか迷う方も多いでしょう。
結論としては、最低でも断熱等級5、予算に応じてさらに高い等級を検討するのがおすすめです。
2025年から義務化されるのは断熱等級4ですが、2030年にはZEH水準の断熱等級5が義務化される予定なので、最低水準だとわずか5年で時代遅れになってしまいます。
マイホームは数十年単位で暮らす大切な場所ですから、将来まで快適に過ごせる性能を最低基準に考えた方が良いでしょう。
快適性や省エネ性を重視する方は、予算が許すのであればなるべく高い断熱等級で建てておくのがおすすめです。
断熱性は住まいの満足度に大きく影響するポイントなので、妥協して暑さ寒さを感じると、大きな後悔を感じるリスクがあります。
断熱等級が高い家づくりで考えるべきポイント
最後に、断熱等級に注目するだけでなく、快適性や満足度が高い住まいづくりをするためのポイントを押さえておきましょう。
しっかり施工できる会社を選ぶ
いくら断熱等級が高いプランを考えても、実際の施工で断熱材やサッシにすき間があると意味がありません。
断熱等級5~7で設計しても、正しく施工できなければ本来の断熱性能を発揮できず、実際に暮らし始めてから暑さ・寒さを感じて後悔するリスクがあります。
断熱等級が高い家づくりの実績があり、しっかり施工監理できる会社に相談することが大切です。
職人の技術はもちろん、正しく施工されているかの確認も含めてた施工監理体制を構築している会社に相談しましょう。
全体のバランスを考えてくれる設計者に相談する
費用と断熱性能、ほかの要素も踏まえて、住まい全体のトータルバランスを考えてくれる設計者に相談することも大切です。
予算や日当たりなどの土地の環境、間取りや設備などほかの部分との費用バランスなど、さまざまな要素で適切な断熱等級は変わってきます。
お施主様のライフスタイルや住まいに求める要望に合わせて、予算内でトータルバランスを取りながらプランを考えることが重要です。
住まいづくりを進めるうちに間取りプランは変わっていきますが、柔軟に対応できるかどうかも重要です。
例えば、日本の尺モジュールより広いメーターモジュールで設計して、プランの変更があっても目標の断熱等級をクリアできるようにする考え方もあります。
メーターモジュールは、尺モジュールより1スパンが90mm広いため、室内側に断熱材の厚みを増して対応することも可能です。
これはあくまで一例ですが、断熱等級は単体で考えるのではなく、住まい全体のバランスを取りながら、理想的なプランを考える必要があるのです。
住宅会社を比較検討するときは、性能数値だけで選ぶのではなく、いろいろ相談・質問してバランスの良い提案をしてくれる設計者を見つけましょう。
まとめ
断熱等級はこれからの住まいづくりにおける重要な性能基準ですが、費用とのバランスを考えることも大切です。
ただ断熱等級を高めるだけでなく、ほかの要素も踏まえてトータルバランスを取ることが、快適で暮らしやすい住まいづくりのポイントです。
断熱等級が高く快適な住まいづくりを目指すなら、神奈川県横浜市の設計事務所・施工会社のcaseIT(ケースイット)にご相談ください。
ケースイットはお客様のご要望をお伺いし、デザインや性能、価格のバランスが取れたご提案を得意としています。
断熱性能のことはもちろん、土地探しから資金計画、間取りのことなど、なんでもお気軽にご相談ください。