SE構法のメリット・デメリット|在来工法との違いを比較

2024/12/30

SE構法の骨組み

画像引用元:株式会社エヌ・シー・エヌ

SE構法(SE工法)は木造建築の一種で、日本古来の在来工法にはないさまざまなメリットがあり、地震が多い日本の注文住宅づくりで人気の高い構造です。

しかし、メリットだけでなくデメリットもあるため、在来工法との違いを把握したうえで、予算や住まいに求める性能に合わせて選ぶことが大切です。

この記事では、SE構法のメリット・デメリット、在来工法との違いを詳しく解説します。


コラムのポイント

  • SE構法は門型のラーメン構造で建物を支える建築方法で、従来の在来工法とはさまざまな違いがあります。
  • 柱や壁のない大空間をつくりやすい、耐震性を高めやすいなど、SE構法ならではのメリットを確認しましょう。
  • 建築費用が高くなる傾向がある、設計に制限が出るなどのデメリットもあり、SE構法より在来工法やツーバイフォー工法などの方がマッチすることもあります。

 

SE構法とは?在来工法との違いを確認

SE構法の接合部

画像引用元:株式会社エヌ・シー・エヌ

SE構法は木造建築技術の一種で、高い耐震性や柱の少ない大空間をつくれるなど、従来の在来工法とは異なるポイントがあります。

具体的なメリット・デメリットを掘り下げる前に、まずはSE構法の基礎知識や在来工法との違いをチェックしておきましょう。

SE構法のSEは「Safety Engineering」の頭文字を取ったもので、耐震性の高い建築物をつくるために考えられた建築方法です。

1995年の阪神淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したことを受け、「株式会社エヌ・シー・エヌ」によってSE構法が生み出されました。

従来の在来工法とSE構法の違いは、梁と柱を剛接続する木造ラーメン構造である点です。

ラーメン構造とはRC造や鉄骨造で採用されることが多く、柱と梁を強固に接合することで、門型のフレームで建物を支える構造のことです。

在来工法は柱の間に「筋交い」を入れた耐力壁で建物を支えますが、SE構法は柱と梁自体を一体化させて耐震性を確保するのが大きな違い。

この構造の違いにより、SE構法は在来工法にはないさまざまなメリット・デメリットが生まれます。

次の章から具体的にチェックしていきましょう。

SE構法のメリット

SE構法の接合部

画像引用元:株式 会社エヌ・シー・エヌ

続いて、具体的なSE構法のメリットを1つずつチェックしていきましょう。

現場での施工ミスが起きにくい

SE構法は工場で木材をプレカットした後、専用の金物を接着した状態で搬入されるため、現場での施工ミスが発生しにくいのが大きなメリットです。

現在は在来工法もプレカットが主流ですが、梁や柱をつなぐ金物は現場施工になるため、施工ミスが起こる可能性はゼロではありません。

一方、SE構法は柱や梁と金物を取り違える可能性がなく、現場監督や大工の技術に依存せず施工ミスを防ぐことができます。

信頼できる施工会社に依頼をすることは注文住宅づくりの大前提ですが、構造自体で人的ミスのリスクを軽減できるのは大きなメリットと言えるでしょう。

高い耐震性が期待できる

SE構法は木造の中でも高い耐震性が期待できる点も人気のポイントです。

SE構法は独自開発したSE金物を使い、柱と梁を「剛接合」して強固なラーメン構造をつくるのが特徴です。

SE金物は木造住宅の弱点を克服するために開発されており、地震による破損や倒壊への強い耐震性が期待できます。

実際にSE構法は4階建て以上の大規模建築にも採用されており、一般住宅においても高い耐震性が期待できます。

柱や壁の少ない大空間を実現しやすい

筋交いによる耐力壁で耐震性を確保する在来工法と比較して、SE構法は柱や壁が少ない大空間をつくりやすいのもメリットの1つです。

前述したようにSE構法は柱や梁を剛接続して強固なラーメン構造をつくるため、在来工法より柱スパンを広く取ることができます。

また、在来工法の筋交いより強度が高い耐力壁を採用することで、少ない壁量で耐震性を確保できるのも特徴です。

柱や壁のない広いリビングや、大開口のビルトインガレージなど、間取りの自由度が高くなることで、より理想的な注文住宅を建てられる可能性が高くなります。

狭小地にも対応しやすい

前述した耐震性や間取りの自由度によって、狭小地や変形地などに対応しやすいのもSE構法のメリットです。

例えば、狭小地では駐車場を確保するためにビルトインガレージを設けたり、建物をオーバーハングさせたりすることがあります。

在来工法だと強度が不足したり、対応できなかったりすることもありますが、このようなケースにもSE構法は対応しやすく、理想的な間取りをつくりやすいです。

住宅性能を高めて補助金や優遇制度を利用しやすい

構造的な強度による耐震性能を高めやすいSE構法の家は、補助金や優遇制度を利用しやすいのもメリットです。

例えば、補助金やさまざまな優遇制度がある長期優良住宅の認定を受けるためには、劣化対策や省エネルギー性にくわえて、高い耐震性能を備えていることが条件になります。

SE構法は耐震等級3を取得しやすく、一棟ごとに構造計算を行うため、長期優良住宅で求められる耐震性能を確保しやすいです。

長期優良住宅の認定を受けると、住宅ローン控除の優遇や地震保険割引など、コスト面でさまざまなメリットがあります。

ただし、耐震等級を高めるとコストも増加するため、必ず耐震等級3を取得した方が良いわけではありません。

ご予算や理想の間取りに合わせて、適切な耐震性能を考えることが大切です。

▼構造についての考え方

SE構法のデメリット

SE構法の模型と設計図

画像引用元:株式 会社エヌ・シー・エヌ

先に挙げたメリットだけでなく、SE構法にはデメリットもあるため、両面を知りほかの工法と比較検討することが大切です。

工務店やハウスメーカーが限られる

SE構法を扱える工務店やハウスメーカーは限られ、依頼先の選択肢が少なくなるのはデメリットの1つです。

SE構法は認定を受けた施工会社しか扱えず、選択肢がかなり絞られます。

都市部では複数の施工会社を選べることもありますが、地方などSE構法に対応している会社自体が少ないケースも。

在来工法のハウスメーカーや工務店と比較して選択肢が少なく、そもそも建てたい場所の近くで会社が見つからない可能性も考えられます。

建築費用が高い

一般的な在来工法と比較して、建築費用が高くなる傾向があるのもSE構法のデメリットです。

高い耐震性や耐久性が期待できる反面、性能や品質を高めるために材料費や施工費が在来工法より高額になります。

また、前述したように金物を接着した状態で現場に搬入されるため、運搬コストが多めにかかるのも建築費用が高くなる原因の1つです。

全棟で実施される構造計算も費用がかかりますので、その分建築費用は高くなります。

間取りやデザインに制限が出ることも

決められた材料を使いマニュアルに沿って施工するSE構法は、間取りやデザインに制限が出るケースもあります。

例えば、在来工法だと使える部材が、SE構法だと選べないケースなどが考えられます。

前述したように柱スパンを広く取るなど設計自体の自由度は高いものの、オリジナリティのある住まいづくりにおいてはデメリットがある可能性もあるのです。

長期間の耐久性実績がない

SE構法は1997年に認定を受けた比較的新しい技術であるため、実際に建てられてから長年経った住宅がないのもデメリットと言えます。

在来工法は日本で古くから採用されてきた歴史があり、データや補修方法などが蓄積されています。

一方、SE構法はまだ数十年の歴史しかなく、木造住宅の主流は今でも在来工法です。

歴史が少ないことが、前述した施工会社の少なさや高額な建築費用の一因にもなっています。

まとめ

今回ご紹介したように、SE構法にはメリット・デメリット両面があり、どのような住まいづくりにおいてもベストな選択とは言い切れません。

在来工法やツーバイフォー工法など、ほかの木造建築技術とも比較検討したうえで、予算や住まいに求めることに合わせて選択することが大切です。

しかし、どの構造・工法が適しているのかはさまざまな要素によって変わるため、一般の方がご自身で判断するのは難しいでしょう。

予算・土地や建物の規模・ライフスタイルなどに合わせて、適切な工法を提案できる設計者のアドバイスを受けるのが確実です。

case IT(ケースイット)は、お客様のご要望に合わせて、デザインや性能と価格のバランスが取れたご提案を得意とする設計事務所・施工会社です。

SE構法のことはもちろん、住まいづくりのことなら何でもお気軽にご相談ください。

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