離れのある家の建築事例|母屋との位置関係や動線など間取りの考え方を解説
2025/10/10

母屋から切り離された離れは、さまざまな用途に活用できるプライベートスペースとして魅力的な間取りアイデアです。
静かな環境で仕事に集中できる書斎や趣味部屋、ゲストルームなど、離れならではのライフスタイルが広がります。
さらに、離れを建てることで、敷地のプライバシー性を高めて中庭のように活用でき、草むしりなどメンテナンスの手間が減るのも魅力的なポイント。
この記事では、離れのある家のメリットや魅力、実際の建築事例や注意点、考え方などを詳しく解説します。
コラムのポイント
- 離れとは母屋から切り離されて独立した建物のことで、プライバシー性が高くさまざまな用途に使えるのがメリットです。
- 建築基準法では原則的に1つの敷地に1つの建物しか建てられないため、離れをつくるためにはさまざまなハードルをクリアする必要があります。
- 法規制をクリアし理想的な離れをつくるためには、施工実績が豊富な専門家に相談するのが確実です。
Contents
離れのある家とは?メリットや魅力

具体的な建築事例や間取りの考え方の前に、まずは離れの基本的な定義やメリット・魅力について確認しておきましょう。
離れとは
母屋と切り離され、同じ敷地内に別棟として建てられる小規模な建物のことを離れと呼びます。
日本では昔から家族が生活するメインの建物を「母屋」、茶室や客間などのために独立した建物を「離れ」と呼ぶ習慣がありました。
現代では離れのある家は少なくなりましたが、旅館や料亭などではよく見られる間取りです。
母屋と渡り廊下でつながった建物を離れと呼ぶこともありますが、本記事では母屋から独立した建物を離れと定義します。
離れの建築基準法上の位置づけ
建築基準法では「一敷地一建物」のルールが定められていて、原則的に1つの敷地には1つの建築物しか建てられません。
ただし、母屋と離れが用途上不可分な関係であれば、1つの敷地に建てることが可能です。
用途上不可分の関係とは、複数の建物がそれぞれの用途を補完しており、単体では独立した用途として成り立たないことを指します。
例えば、離れにキッチンや浴室などの設備がなく、母屋がないと生活が成り立たない場合は用途上不可分とみなされます。
逆に、離れに水回りがあり生活が完結できる場合は、独立した建物とみなされ1つの敷地内には建てられません。
離れのメリット・魅力
母屋とは別に離れを建てることで、次のようなメリットや魅力が生まれます。
- 母屋と切り離されたプライバシー性の高いスペースができる
- 母屋と離れの間を中庭のように活用できる
- 庭の面積が減り草むしりや維持管理の手間が減る
離れは母屋から独立していることで、生活から切り離されたプライバシー性が高いスペースになるのが大きなメリットです。
書斎や勉強部屋、ゲストルームなど、母屋と程よい距離感で過ごせるスペースが欲しいときに向いています。
また、敷地を囲むように母屋と離れを配置することで、周囲からの視線を遮り中庭のようなスペースができるのもメリットの1つです。
周囲の建物が近く庭を活用しにくい立地でも、離れを建てることでプライバシー性を高め、アウトドアリビングや家庭菜園などの用途が広がります。
離れの床面積の分だけ敷地面積が減るため、草むしりや維持管理の手間が減るのも意外なメリットです。
離れのある家の建築事例
実際に離れをつくった家の建築事例をご紹介します。

趣味の本に囲まれた空間が欲しいというお施主様のご要望から、母屋と程よい距離感で静かに過ごせる離れを建てた事例です。
ただ母屋から切り離された空間をつくるのではなく、離れでの思索や畑で土に触れる時間のバランスを取りつつ、ウッドデッキで離れとつなぐ計画を立てました。

生活の拠点である母屋とプライベートスペースである離れをウッドデッキが緩やかに結び、一度外の空気に触れることで日常と静寂を切り替えられるようになっています。
また、母屋と離れの間にある庭は、土に触れながら家庭菜園を楽しめる空間に。

離れの壁一面には本棚を造作し、書庫としての機能だけでなく庭や母屋を眺めながら静かに過ごせるスペースに仕上がりました。
離れを建てるときは事前確認が重要

実際に離れのある家を計画する際は、まず建てられるかどうかの事前確認が重要です。
前述したように建築基準法では1つの敷地に1つの建物が原則となるため、離れが用途上不可分でないと建てられません。
離れに水回りや寝室などをつくると、生活が完結する独立した建物とみなされ建築不可となるケースが多いです。
また、離れが用途上不可分とみなされる場合でも、建ぺい率・容積率をはじめとする法規制をクリアしないと建てることはできません。
母屋が建ぺい率・容積率の上限で建てられている場合は、離れは建築不可となります。
防火地域や準防火地域などでは、離れに使用する建材や窓の大きさなどが制限されることも。
さらに、都市計画区域内などほとんどの離れは建築確認申請が必要になるため、母屋を建てた後で法改正されていると対応が求められるケースもあります。
このように離れを建てるためにはさまざまな規制やハードルがあるため、専門家に相談し自治体への事前確認が必須です。
離れを建てられるか事前に確認せず計画を立ててしまうと、プランを大幅に変更せざるを得なくなったり、計画自体が中止になったりしてしまう可能性があります。
例えば、用途上不可分の判断は自治体によって異なり、簡易的な洗面台やエアコンを設置するだけで独立した建物とみなされてしまうケースも。
必ず離れの施工実績がある建築士や設計事務所に相談し、自治体との事前協議を行ったうえで建築プランを考えることが大切です。
離れのある家の間取りの考え方

実際に離れの計画を立てるときは、次のようなポイントを押さえて使いやすい間取りに仕上げましょう。
母屋との距離感と動線
離れの用途や目的に応じて、母屋との距離感や動線を考えるのは大切なポイントです。
例えば、母屋と離れの存在を感じられるようにするなら、程よい距離感で視線が届くように配置するのが理想的です。
趣味や仕事などに集中できるプライバシー感を守りつつ、声をかけやすい距離感を意識しましょう。
また、離れへの動線が悪いと、行き来に不便を感じたり使わなくなったりするリスクもあります。
先ほどご紹介した建築事例のようにウッドデッキでスムーズな動線をつくったり、屋根をかけたりして利便性も考えましょう。
日当たりや圧迫感
離れを母屋に近づけすぎると、日当たりが悪くなったり圧迫感が出たりする可能性もあるため、必ずチェックすべきポイントです。
離れが日差しを遮ると、庭が暗くなり母屋の室内も採光性が低下してしまいます。
また、リビングなど母屋の窓から近い場所に離れを建てると、圧迫感が出て住まい全体が残念な印象になってしまうこともあります。
日当たりや圧迫感は図面だけだと分かりにくい部分ですから、離れを建てる場所や大きさをシミュレーションすることが大切です。
まとめ
離れのある家は、暮らしにゆとりや多様性をもたらす一方で、建築基準法や自治体の判断に左右される点が多くあります。
「建てられるかどうか」「どのように配置するか」を専門家と相談しながら進めることで、失敗を防ぎ、理想的な離れのある家を実現できます。
離れの施工実績があり、法規制の確認や自治体との事前協議までトータルサポートできる会社に相談しましょう。
私たちcaseIT(ケースイット)は、お客様のライフスタイルや理想のイメージをお伺いし、建築プランのご提案から施工までお手伝いする設計施工会社です。
多くの実績で培ったノウハウを活かし、自治体との事前協議を含めてお客様に合わせた離れのプランをご提案いたします。
ぜひお気軽にご相談ください。

