擁壁のある土地はやめた方がいい?メリット・デメリットや後悔を防ぐポイントを解説

2025/5/30

擁壁のある土地

高台で眺望や日当たりの良い土地を探していると擁壁があり、購入して良いのか迷う方が多いようです。

擁壁のある土地はやめた方がいいと言われることが多いですが、メリット・デメリット両面がるため理想的な家づくりの選択肢にもなり得ます。

そこでこの記事では、擁壁のある土地のメリット・デメリットを詳しく掘り下げ、崩壊リスクや追加費用による後悔を防ぐためのポイントを解説します。

 


コラムのポイント

  • 擁壁のある土地はやめた方がいいと言われているのは、追加費用や崩壊リスクなどのデメリットがあるためです。
  • デメリットを把握して対策すれば、相場より安く条件の良い擁壁のある土地を購入できる可能性があります。
  • 擁壁の状態や耐用年数など、土地選びの際にチェックすべきポイントを解説します。

 

擁壁のある土地はやめた方がいい?

古い擁壁のる土地

擁壁のある土地についてインターネットで調べると、「デメリットがあるからやめた方がいい」「後悔する」といったネガティブな意見が多く見受けられます。

確かに、擁壁のある土地にはいくつかのデメリットがあり、知らずに購入してしまうと後悔するリスクはあります。

例えば、擁壁の補修やつくり直しに多額の追加費用がかかったり、建築基準法やがけ条例などの規制によって理想の住まいを建てられなかったりして後悔するリスクもゼロではありません。

また、地震や台風などで万が一擁壁が崩壊して周囲に被害を及ぼした場合、賠償責任を問われるリスクもあります。

しかし、擁壁のある土地にはメリットもあるため、デメリットを把握してしっかり対策すれば、理想の住まいを建てられる可能性も高いです。

擁壁のある土地は高台や傾斜地に多く見られ、眺望や日当たりが良い住まいを建てられることが多いです。

次の章から、擁壁のある土地を選ぶために必要となる基礎知識や、メリット・デメリットを1つずつチェックしていきましょう。

擁壁の役割と種類、横浜市の条例を確認

まずは、擁壁の基本的な役割や種類、法規制などの基礎知識を確認しておきましょう。

傾斜地や擁壁のある土地が多い横浜市を例に挙げて、がけ条例についても解説します。

擁壁=高低差のある土地のがけ崩れを防ぐ建築物

擁壁のある住宅地

擁壁とは、高低差のある土地のがけや地盤が崩れるのを防ぐために設置される建築物のことです。

コンクリートやブロックなどでつくる壁状の構造物で、がけ崩れを防いで保持する役割を持っています。

建築基準法では、擁壁について次のように規定しています。

 

(敷地の衛生及び安全)

第19条4項

建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

出典:e-Gov法令検索 建築基準法

 

高低差がありがけ崩れが発生する可能性がある土地には、擁壁を設置する必要があるということです。

高さ2メートルを超える擁壁は建築基準法における「工作物」に該当し、一定の基準を満たしたうえで建築確認申請をする必要があります。

擁壁は土地の所有者に管理責任があり、補修やつくり直しにかかる費用は自己負担となります。

擁壁の種類

鉄筋コンクリート擁壁

擁壁は構造によっていくつかの種類があり、古いものは現行の法基準に適合しないケースもあります。

 

※擁壁の代表的な種類

  • 鉄筋コンクリート(RC)擁壁
  • 間知ブロック擁壁
  • 型枠ブロック擁壁
  • 空石積み擁壁
  • 大谷石擁壁

 

近年一般的に使われているのは、鉄筋コンクリート擁壁や間知ブロック擁壁が多く、予算や土地の高低差などの状況に合わせて選ばれます。

コンクリートを使わず自然石などを積み上げただけの空石積み擁壁、経年劣化しやすい大谷石擁壁などは現行の建築基準法の基準を満たしていない不適格擁壁のため注意が必要です。

また、昔につくられたコンクリートブロック擁壁も、現行の基準には適合しないため注意しましょう。

不適格擁壁自体は違法ではありませんが、新たに家を建てる場合建築確認申請の対象となるため、補強やつくり直しが必要になる可能性があります。

土地選びの段階で見極める必要があるため、ここでは擁壁にはいくつかの種類があることを覚えておいてください。

擁壁に影響するがけ条例:横浜市の場合

がけ条例の対象となる横浜市の市街地

擁壁に関する法律は建築基準法だけでなく、自治体が定めているがけ条例の制限を受けるため確認や対策が必要です。

例えば、丘陵地が多い横浜市の場合、がけ条例によって一定の高低差のある土地に擁壁をつくることが義務付けられています。

 

  • 高さ3メートル超
  • 主要部分の勾配が30度超

参照:横浜市建築基準条例及び同解説

 

具体的には、上記の高さや角度を超える崖がある土地には、一定の基準を満たした擁壁が設置です。

がけ条例では設置する擁壁の構造や角度、建築物とがけの距離などが細かく規定されているため、家づくりにも影響します。

がけ条例は都道府県や市町村ごとに内容が異なるため、土地ごとに基準を確認して家づくりをする必要があることを覚えておきましょう。

擁壁のある土地に家を建てるメリット

日当たりの良い擁壁のある土地

擁壁のある土地には注意すべきポイントもありますが、家づくりにおいて次のようなメリットもあります。

眺望や日当たりの良い家を建てやすい

擁壁は高台のある土地につくられていることが多く、高低差を活かして眺望や日当たりの良い家を建てやすいのがメリットです。

高低差のある土地は周囲の建物に視界や日差しを遮られにくく、後で大きな建物ができて環境が変化するリスクも少ないです。

擁壁のある土地の家の施工事例

▼西八朔の家

例えば、こちらの家は5メートル以上の擁壁に面した土地を活かし、抜け感を大切にした事務所兼自宅の施工事例です。

 

擁壁のある土地に立つ家の1階の窓から見える景色

▼西八朔の家

1階のオフィスの窓は擁壁の高低差を活かし、遠くまで視線が抜けて開放感のある空間に。

 

擁壁のある土地に建つ家の2回リビング

▼西八朔の家

2階のリビングも、高台からの景色をたっぷり楽しめる間取りになっています。

 

このように、擁壁のある土地の環境を上手く活かすことができれば、平地にはない開放感や魅力を持った家を建てられるのは大きなメリットです。

土地の選択肢が広がる

擁壁のある土地を視野に入れることで選択肢が広がり、予算内で希望条件を満たす家を建てられる可能性が高くなるのもメリットです。

南向きの条件が良い土地は人気で競争率や販売価格が高いため、理想的な物件が見つからなかったり予算オーバーになったりするケースが多いです。

一方、擁壁のある土地は相場より安く販売されていることが多く、うまく選べば住まいづくりの費用を抑えられる可能性があります。

土地購入費用を抑えて建物に予算を回したり、相場が高いエリアに家を建てたりできるのは大きなメリットですね。

地階を活用できることもある

高低差が大きい土地では、擁壁の構造に工夫して地階(地下室)を活用しやすいのもメリットの1つです。

地階は住宅の延床面積の1/3を上限として容積率の計算から除外できるため、うまく活用すれば部屋数や収納などを増やすことができます。

地階をつくるための予算は必要になりますが、都市部の狭小地などで居住スペースを確保するための有効な選択肢になる可能性もあります。

擁壁のある土地に家を建てるデメリットや注意点

老朽化した擁壁のある土地

擁壁の構造や状態によっては、家を建てる際に次のようなデメリットが発生することもあります。

対策は次の章で詳しく解説しますので、ここではまず擁壁のある土地にどんなデメリットがあるのか覚えておきましょう。

老朽化した擁壁は崩壊リスクがある

擁壁には耐用年数があり、老朽化が進んでいると台風や地震による崩壊リスクがある点に注意が必要です。

一般的な擁壁の耐用年数は30~50年程度と言われていて、寿命を過ぎると崩壊するリスクが高くなります。

万が一擁壁が崩壊して周囲の建物などに被害が発生した場合、土地の所有者が賠償責任を負うことになります。

後半で擁壁の状態チェックポイントをご紹介しますので、土地選びの段階から対策してリスクを回避しましょう。

擁壁のやり直しが必要にあることもある

前述した老朽化した擁壁や現行の基準を満たしていない不適格擁壁は、家を建てる際にやり直し工事が必要になるケースもあります。

例えば、不適格擁壁自体は違法ではありませんが、新築を建てる場合は建築確認の手続きが必要になり、現行の基準を満たす必要があります。

古い擁壁や検査済証がない擁壁がある土地には、そのまま新築住宅を建てられない可能性があるのです。

擁壁のやり直しには工期と多額の費用がかかるため、大きなデメリットになり得ます。

家づくりの追加費用がかかる

擁壁をそのまま使える場合でも、家を建てる際に追加費用がかかる可能性があるのも注意すべきデメリットです。

例えば、宅地造成などで盛土をして擁壁を設置した土地の場合、家を建てるために地盤改良工事が必要になることがあります。

一般的な土地でも地盤改良工事が必要になることはありますが、擁壁の大きさや状況によっては追加費用が高額になるケースも。

ただし、前述したように擁壁のある土地は安く販売されていることが多いため、追加費用がかかっても、一般的な相場で眺望や日当たりが良い家を建てられる可能性もあります。

坂の上り下りが負担になることがある

擁壁のある土地が高台にある場合、徒歩や自転車などで出かける際に坂の上り下りが負担となる可能性もあります。

スーパーやドラッグストアで買い物をする際、荷物を持って毎回坂を上るのはなかなか大変です。

普段の移動が車なら大きなデメリットにはなりませんが、徒歩や自転車で生活する場合は注意が必要なポイントです。

境界トラブルのリスクがある

擁壁の補修ややり直し工事をする際、隣地との境界トラブルのリスクがあるのもデメリットの1つです。

古い土地で境界を示す杭や標識が紛失してしまっている場合、隣地所有者と擁壁の位置でトラブルになるケースが多いです。

また、擁壁をやり直す際は隣の敷地を使わせてもらう必要があるため、トラブルがあると工事がうまく進められないリスクもあります。

売却の難易度が高い

ここまでご紹介したように、擁壁のある土地にはいくつかのデメリットがあるため、売却の難易度が高いのも注意点です。

将来転勤や住み替えなどで売却が必要になった場合、買手を見つけにくい可能性があります。

また、相場より安く購入しやすい反面、売却時は希望金額で売れない可能性があるのもデメリットと言えます。

擁壁のある土地の後悔を防ぐポイント

擁壁のある土地の点検

前述したようなデメリットやリスクに対策し、擁壁のある土地選びによる後悔を防ぐためのポイントを覚えておきましょう。

擁壁の状態を確認する

まずは、擁壁の状態を確認し、崩壊リスクのある土地を避けることが大切です。

 

※擁壁の状態チェックポイント

  • 表面にひび割れ(クラック)がないか
  • 膨らみやブロックのずれはないか
  • 水抜き穴があるか・詰まっていないか
  • 擁壁の周辺の排水施設が壊れていないか
  • 表面が湿っている・水が流れた跡はないか

参照:横浜市 あなたの擁壁は安全ですか?

 

古い擁壁のブロックのずれ

上記に当てはまる擁壁は、老朽化が進んでいたり、状態が悪かったりして崩壊リスクが高い可能性があります。

例えば、水抜き穴がなかったり詰まったりしている擁壁は、裏側に水が溜まって圧力(土圧)がかかり、崩壊するリスクが高くなります。

色々な角度から擁壁をチェックして危険な土地を回避しましょう。

土地購入と家づくりの総額費用を把握する

擁壁のある土地を選ぶ際は、購入費用と家づくりにかかる総額費用を知ることが大切です。

前述したように、擁壁のある土地は補強やつくり直し、地盤改良などの追加費用がかかることが多いです。

相場より安く土地を購入できても、追加費用が高額になると予算オーバーしてしまうリスクも考えられます。

土地選びの段階で家づくりのプランも同時進行し、擁壁工事や付帯工事も含めた総額費用を把握してから購入するのが後悔を防ぐポイントです。

耐用年数や将来のメンテナンス費用を確認する

現状耐久性に問題ない擁壁のある土地でも将来を見据えて耐用年数やメンテナンス費用を確認しておくことも大切です。

擁壁のつくり直しには多額の費用がかかるため、いくらかかるのか知って予算を積み立てておく必要があるのです。

例えば、擁壁の建築にかかる費用は1㎡あたり10万円~が相場です。

仮に幅10メートル×高さ2メートルで20㎡の擁壁をつくり直す場合は建築だけで200万円、さらに解体費用や廃材処分費用、建築確認申請費用などがかかります。

参照:一般社団法人日本擁壁保証協会

 

もし10年後に擁壁のつくり直しが必要になる場合は、家を建てるとき一緒に工事した方が費用を抑えられる可能性もあります。

擁壁を維持するためにどんなメンテナンスが必要なのか、いくらぐらい費用がかかるのか事前に把握して後悔を防ぎましょう。

土地相場を把握する

擁壁のある土地選びでは、近隣の相場を把握して適正な価格で購入することも大切なポイントです。

前述したように擁壁のある土地の販売価格は安めに設定されることが多いですが、相場を知らないと適正かどうか判断できません。

近隣の一般的な土地相場と、家を建てるためにかかる追加費用を把握し、適正な価格か判断する必要があるのです。

販売価格が相場より高い場合は、家づくりにかかる追加費用を知っていれば価格交渉をしやすくなります。

こちらのコラムで神奈川県全体の土地相場や横浜市の区ごとの相場を紹介していますので、考え方の参考にしてみてください。

〈関連コラム〉

横浜市の注文住宅相場は?青葉区など人気エリアの土地価格相場も紹介

 

土地自体の利便性を確認する

高台の擁壁がある土地を選ぶ場合は、事前に買い物や通勤などの利便性を確認しておきましょう。

買い物スポットが近くにあり坂の上り下りが負担にならないか、バス停や駅までの道のりに高低差がないかなど、実際の生活を想定することが大切です。

スーパーやドラッグストアなどが近くにない場合は、通販や宅配サービスなどを活用するのも1つの考え方です。

一般的な土地の利便性の確認にくわえて、高低差を踏まえて生活の負担がないかチェックしましょう。

擁壁のある土地はプロと事前に確認すべき

擁壁のある土地にはメリット・デメリット両面があり、うまく選べば費用を抑えて理想の住まいを建てられる可能性があります。

しかし、擁壁の状態や法規制などチェックすべきポイントが多いため、土地を購入する前にプロに相談するのが理想的です。

擁壁のある土地での家づくりの実績が豊富な施工会社や設計会社に事前相談することで、リスクを回避して理想のマイホームを建てやすくなります。

私たちcaseIT(ケースイット)は、設計会社として多くの住まいづくりに携わった実績を活かし、擁壁のある土地選びもサポートいたします。

候補の土地に擁壁がある場合、ご相談いただければ現地を確認してアドバイスをすることも可能です。

横浜市青葉区を中心に、東京都内の住まいづくりにも対応していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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